「あの手の甲の痛みを忘れることなく」

認定NO.54 井田 智子
 「ピシッ!」
手の甲に痛みが走ったと同時に、桶谷先生の「帰れーっ」という怒りに満ちた声が診察室中に響き渡たりました。
呆然と立ちつくす私。

 「そんなものは手技ではない。帰れ!」

その場にいたたまれず、新家の駅までの道を泣きながら走って帰ったあの日。
当時私は病院で、桶谷式を学んだ先輩を真似て手技らしきことをしていました。そんな「手技」でも今までのマッサージよりはマシなようで、お母さん方に喜ばれていた(と思っていた)ので、自分の手技はいいセンいっていると信じていたのです。
だから自信満々で手技をし、先生の怒りを買ってしまいました。

人前で叱られた恥ずかしさ、傲慢だった自分への怒り、先生への申し訳なさ、いろいろな感情が一気にこみ上げてきて、電車の中でも涙が止まらなかったあの日。
自分の手技の未熟さと、貧しい心を恥じました。桶谷先生のもとで、心と手をたたき直したいと切実に願いました。

翌日、一から出直そうと先生に謝罪し、幸いにも入門を許されました。
先生宅の敷居は二度とまたがせてもらえないと思っていただけに、うれしくて、うれしくて、また涙が出ました。
私の人生の転機となった桶谷先生との出会い。
あれから25年、あの手の甲の痛みを忘れることなく、これからも自分の手技と心を振り返る余裕を持ち続けたいと思います。

井田助産院

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